「シーラ、もう少しでつくよ。」
ブルンネンシュティグの近くの道で二人の女性が歩いている。
一人は小柄だがしっかりとしてそうな女性。
もう一人の、シーラと呼ばれた女性、という感じではない少女は
小柄な女性よりさらに小柄で幼い顔立ちをしている。
「うん、わかった。私ね、冒険者になったらたっくさーんの仕事をしてみんなを…」
シーラは歩きながら自分の夢について語り始めた。
「はいはい、わかったから。前見て歩いて。」
もう一人の女性はシーラの言葉を軽く聞き流しながらも楽しそうな笑顔だった。
「そういえばレナ、私はロマ村から出なかったけど、早くにロマ村から出たテイマーはどんな感じなの?」
シーラは今までずっとロマ村で修行してから冒険者になった。一昔前はそれが普通だった。
しかし、今では基本技術を覚えてすぐにロマ村から旅立つテイマーやサマナーが増えてきた。
今ではほとんどの人間がその形だ。
「んー、私も修行してから出たからよく分かんないんだけど…、戦いながらその経験で技術を伸ばしていくの。」
「ふーん。」
二人はその後も楽しそうに会話しながら歩いている。
そのときだった。
「…!!」
レナが違和感を感じて振り返ると後ろにはモンスターが武器を構えている。
「シーラ、危ない!!」
レナがシーラを押し倒す。
モンスターの武器は二人の上をかすめていった。
「くっ…いけ…!!!」
レナはオレンジの表紙の本をカバンから取り出し、開く。
そうするとその本が光り、2体のモンスターが現れた。
2体のモンスターはたちまち敵に飛び掛ると、ものすごい速さで槍で突いた。
敵は何もできないまま崩れ落ちていった。
…ファミリアだ。
今では最もポピュラーなペットとしてしられる優秀な種族。
スピードはビーストテイマーが調教できるモンスターの中では最速とも言われる。
「そういえば…ここらへんもモンスターでるんだったね。シーラも飼育記録から出したほうがいいよ。」
「あ…え?あ、はーい。びっくりしたぁ…」
シーラは押し倒されたままキョトンとしていた。
突然の出来事に何がなんだかわからなかったのだ。
彼女は冒険者としての経験が皆無なのでテイマーの技術は極めていてもこういう状況には慣れていない。
シーラは慌ててカバンからオレンジ色の本を取り出し、開く。
そうするとまた同じように2体のファミリアが現れた。
「えへ、これからもっとよろしくね。ファミリアさん達。」
シーラはそういうとファミリアの頭を撫でる。
ファミリアはシーラにとても慣れている様子だった。
「ほう…なかなかできるようだ…。」
甲高い男の声。聞いていて不快になるような声だ。
「…誰?」
シーラが不安そうにレナにしがみつく。
「ここだよ…お嬢ちゃん達…」
レナはとっさに後ろに振り向く。そこには…
デビルスカラーだ。人型のモンスターで知能は高い。
しかし…
「…デビルスカラーがこんなところに居るなんて…まさか…」
ここには生息していないタイプのモンスターのはず、しかし、確かにそれはデビルスカラーだ。
「…アンテイム!!」
アンテイム。この手の悪魔の使う技術だ。
悪魔の様々な誘惑で従者の主人への忠誠心を妨げる。
だが、その効果は数秒に留まる。ビーストテイマーとペットには固い繋がりがあるからだ。
「くっ…でも、効果は数秒のはず…!!」
レナが戦闘態勢を再び整えながら言う。
「ククッ、どうかな?」
デビルスカラーの甲高い声。それと同時にレナの二匹のファミリアが二人に飛び掛る。
シーラの二匹のファミリアがその攻撃を防ぐ。
四匹のファミリアによる小競り合いは続く。
「え…?」
もう、前のアンテイムから何十秒もたつ。しかし、ファミリアの様子は依然としてかわらない。
「ククッ…クハハッ…アンテイム!!!」
デビルスカラーは高笑いしながらシーラの二匹のファミリアにアンテイムを仕掛ける。
そして…
「いやああぁぁ!!!」
二匹のファミリアの心は揺れる…。
次の瞬間だった。
シーラの脇腹に走る、赤。激痛。そして、空を貫く悲鳴。
痛みが悔しさの涙を押し出す。シーラと二匹のファミリアは信頼で結ばれていたのに…
「シーラ!!逃げるよ!!!」
レナはシーラに魔力のこもった石を渡す。
そして、レナはその石の魔力を開放する。
レナが光に包まれる。
光に包まれたレナが見たものは…
無残なシーラの姿。シーラは、石の魔力を使いこなせなかった。
「シーラアァァ!!!!」
二つ目の悲鳴が空を貫く。
光が消える。デビルスカラーと四匹のファミリアの姿はもうなかった。
後に残ったのは、横たわるシーラの姿。
どれくらい時がたったのだろうか。一人の青年がそこを訪れた。
「…大丈夫ですか?…これは…」
シーラに話しかける青年。そして…
「…リザレクション!!!」
ビショップの超高等技術。回復呪文の中でも最高難度を誇る。
その効果は絶大で、肉体的な回復はわずかだが、唯一精神の回復を行うことが出来る。
衰弱した魂を蘇生する、蘇生魔法。
「ん…」
シーラは目を覚ます。ぼろぼろな体を引きずりながら。
「…、動かないで、今回復します。」
その青年、ビショップは呪文を唱え、シーラの体の傷を治す。
無数の槍の傷は跡も残さず、癒えた。
「あ…あなたは?」
トロンとした目でシーラが聞く。
「ダール、この近くの教会のビショップです。」
ダールはシーラの手をとり、教会へと歩いていく。
-----続く-----
書いたぞー!!!ヾ(`Д´*)ノシ
今まで放置しててすいません…orz
RSのほうもがんばっていかないと…